千年を超えて受け継がれる陶芸「備前焼」は、瀬戸、常滑、越前、信楽、丹波とともに「日本六古窯」のひとつに数えられる、千年以上の歴史を持つ窯場です。
その中でも、もっとも古く歴史のある窯が「備前焼」です。
備前焼の一大窯場である岡山県備前市には、現在も多くの窯元があり、数多くの備前焼作家が日々作品作りに精進を重ねていて、千年以上もの長い年月、窯の火を絶やしたことが無いといわれています。
出来を左右する「土づくり」 
「備前焼」の土台は、「一【土】、二【焼】、三【形】」といわれるほどその出来栄えを大きく左右する「土づくり」にあります。
原料となる土は、備前市伊部地区などに堆積した「ひよせ」と呼ばれる田んぼの底から採取した土です。
この土には、高温の炎と反応することで多彩な窯変が発現する要因となる「鉄分、多種多様な有機物」を多く含んでいます。
採取した「ひよせ」を数年風雨にさした後、粒子の大きさをふるいにかける「水簸(すいひ)」、水分を抜く「陰干し」、土を熟成させる「寝かし」などの多くの工程を経て、ようやく原料の土が完成します。
備前焼の最大の魅力「窯変(ようへん)」 「備前焼」最大の特長は、「釉薬も絵付けも施さない、簡素で素朴な美しさ」です。
備前焼には欠かせない「赤松の割木」を燃料に用いて、1,200℃にも達する高温の炎が躍る「登り窯」でじっくり約10日間焼成します。

古くから受け継がれる「焼締め」という技法で焼成することで、陶肌に「窯変(ようへん)」が現れます。
「備前焼」の美しさは、灼熱の炎によって生み出されるこの「窯変(ようへん)」にあります。
「窯変(ようへん)」には大きく三つの特長があります。
『胡麻(ごま)』
燃料の松割木の灰が高温の熱で熔けて釉化(ガラス化)し、陶肌に胡麻をふりかけたようなポツポツとした模様が現れる事です。
このような『胡麻』は、窯の中でも比較的高温の火の近くで焼かれたものに多く発現します。
『棧切り(さんぎり)』
焼成の過程で、窯床に置いた作品が灰に埋もれて火に直接当たらない場合や、空気の流れなどで「いぶし焼(還元焼成)」になった場合に生じる窯変で、陶肌の色に灰色、暗灰色、青色などが発現します。
『緋襷(ひだすき)』
白色や薄い色の陶肌に緋色(ひいろ/赤)の線や模様などが襷(たすき)のように入る事で、『緋襷(ひだすき)』の名前の通り「緋色(赤)」の「襷(たすき)」がかかったような美しい模様が特徴です。
この緋色の模様は、作品に藁(わら)を巻いて焼くことで発現する模様なのですが、元々は作品同士が窯の中でくっつくのを防ぐために、作品の間に藁(ワラ)を挟んだり巻いたりして焼き上げた場合に発現したことが始まりのようです。